なんの為にJCに入ったのか?
この理事長所信を書き続けていた中で辿り着いた一つの問い。
その答えは、「成長したい」という純粋無垢のたった一つの想い。
【はじめに】
他の団体と一線を画す団体として父と兄に背中を押され、大きな期待と不安を胸に入会しました。入会前の社業では、2期連続の大型赤字決算、直後の大型不良債権発生の荒波を何とか乗り越え、これから益々仕事に専念しなければならないと思っていた矢先のことでした。不安を感じながらも絶対に成長し会社に還元すると固く決意し入会したこと思い出します。
入会させて頂いたJCI高岡は想像を超えてキラキラと輝いており、メンバーの熱量、スタッフや委員長達の向き合う姿勢、正副から感じる無条件のカッコ良さ、組織の規律、その全てが私にとっては新鮮で、一気にのめり込んでいきました。当時の私は、無理をしてでも活動や大会、研修に参加していたことから、「普通、新入会員は来ないよ?」とか「よ!未来の理事長!」など、よく茶化されてもいました。人から何と思われても良い。ただ、成長したい。この願望に突き動かされて、一心不乱に青年会議所活動に邁進していたように思います。その想いを汲み取るかのように諸先輩やメンバーは私に対して発展と成長の機会を与え続けて下さいました。12月度例会、日本アカデミー、JIMO-TECH-LABO、SDGsアンバサダー、全国城下町シンポジウム高岡大会、ベビーファースト運動など、たくさんの機会に恵まれ、それらの経験を通して私自身が成長を実感できるようになりました。感謝しかありません。そしてその成長は社業へも好影響を与えていきました。ある年は次年度の役職について、大きな不安があるものの自分自身と真剣に向き合い、覚悟を決め、チャレンジすることを選択したときもありました。苦しいことが多くも充実した日々を過ごし、何もかもが順調に進んでいると思っていました。
しかし、その好影響は私を徐々に勘違いさせていくことになりました。純粋無垢なまでに成長したいと思っていたJC活動は、その好影響を通していつしか仕事の成果を追うための道具として活用されるようになっていくこととなります。そのころから、どこかJCに不足感を感じ、一体何のためにJCをやっているのかがわからなくなることが増え、そして、あるタイミングで、仕事で成果を出すためにJCを活用することにすら限界を感じることになりました。そのタイミングは、先に述べたある役職にチャレンジすると決めたことを自分自身が諦めた瞬間のことでした。私にとっての大きな挫折でした。実際に1年以上にわたり自分自身の葛藤がつづくことになりました。そんな中ではあったものの、多くの方に期待を寄せて頂いたことや2022年度卒業生の雄姿、後輩メンバーたちのJCにかける熱き想いに心を打たれ、最後にもう一度チャレンジしたいと思い、理事長に立候補することにしました。ただ、私の燻りそのものは消えることはありませんでした。そんな燻りを見せ続ける私に対して、とある先輩が声をかけてくださり内省する機会を頂けることになりました。
取り組みは、自身の蓋ともいうべき「心の葛藤」を見つけるところからはじまりました。自分自身と向き合い続ける中で気が付いたのは、ある日を境に、メンバーの成長よりも、LOMや高岡をより良くすることよりも、自分自身の成長よりも、大切な家族よりも、私は仕事で成果を出す事しか考えなくなってしまっていたこと。自分にしか興味を示してこられなくなってしまっていたこと。JCで成長したことに過信してしまっていたこと。自問自答し続け、私を信じ理事長を任せてくださったメンバーへの申し訳が立たない気持ちや不甲斐なさを感じ、深く後悔しました。家族の時間も仕事の時間も費やし、一体何のためにJCをやってきたのか。仕事で成果を出すというちっぽけな満足感のために自分はJCをやってきたのか。家族、社員、メンバーを含め、そんな成果を誰が望んでいるのか。こんな理事長、一体誰が付いてきたいと思えるのか。潜在的な思考の土台がそこにあり、行動としてにじみ出ていたのではないかと思います。
自分自身も気づけていなかった心の蓋が見つかったことにより、一つの信念が生まれました。その信念とは、「メンバーと高岡のために良いLOMをつくる」というものでした。私は、みんなの力になり、勇気を与えられる人間でありたい。自分や自分の会社のためだけに使われる成長ではなく、メンバーやLOM、パートナー、高岡へと還元できる力が欲しい。そのために成長したい。と心から思えるようになってきました。青年会議所活動を通して、多くの尊敬できる方々に出会い、様々なリーダーシップを見てきました。共通して言えることは、自分が知りえた情報、経験してきたことを惜しみなく時間をかけて他の人へ分かち合える人であり、自ら奉仕する人達でした。決してトップダウン型ではなく、常に志座は高く、地域社会に目を向け、自分はどうあるべきか、自身の関わる組織はどうあるべきかを考え続け行動し、更に、人の育成においては社会のために役立つ人財を生み出そうとし続けていました。そのような方々の傍で多くの経験をさせて頂き、今振り返れば、青年会議所という最高の学び舎を突き詰め、果敢にチャレンジしていけば、運動や出会いを通して人々を幸せにできる数が限りなく増え、その喜びの追求の中に、自らの人生をも豊かにする本質的な学びが眠っていると確信しました。
7年間の活動の中で、その代表的な運動がベビーファースト運動であったように思います。これほどまでに多くの人を巻き込み、賛同者と受益者が喜ばれた運動は経験したこともなく、最も共感を生みだせた運動はありません。
当時、この運動を青年会議所の役割として終えた時、自分自身にはたくさんの共感を生み出せたことによる達成感と満足感がありました。しかし、それで社会が変わったのかと言えば、そんなことはありませんでした。ご賛同いただいた皆様、構築に全力で協力してくれたメンバーには最大限の感謝しかりません。しかし、半数以上の組織が具体的アクションとして完結することはできず、子どもを産み育てやすい社会を実現するための本質的アクションの数値成果には課題が残りました。
共感を生み出し続けるには、常に主語を「まち」として語り、市民が内発的に動機づけられるような地域貢献とメリットを一致させ、共により良い高岡の実現のために協業し続ける仕組をつくることにあることにあります。そしてその解決の糸口こそがまち共通のビジョンを掲げることにあると考えました。
まち共通のビジョンを掲げる目的は、まちのアイデンティティを形成することにあると考えています。まちのアイデンティティはそのまちのDNAのようなものであり、高岡が何者であるか、関係する市民が何を信じ、何を目指すかを定義することにあります。つまり、ビジョンを山の頂上に例えると、現在、まちには共通の山が無く、それぞれの組織が独自に目指す山を登り続けています。それでは、一つひとつの小さな山は登れても、高岡の明るい未来という大きな山を登り切ることは出来ません。まち共通のビジョンを掲げ運用されることにより、アイデンティティが形成され、市民一体となって登るべき山が明確になり、それぞれが互いの組織価値を認め合い、それぞれの団体が強みを活かし共に協力し合うことで、実現すべきまち共通のビジョンという名の山を登り切ることができると確信しています。そして、それらを先導する組織がJCI高岡でありたい。なぜなら、私たちの理想の姿こそ「若きリーダーの国際的ネットワークを先導する組織」であるからです。
【まち共通のビジョン策定】
まち共通のビジョンを策定し、実行の土台を整える1年間とします。なぜなら自らのビジョンを掲げ活動している団体や企業、人は数多く存在しており、その想いの束が共通のビジョンとして一体となることで、高岡全体として一つの大きな目標に向かって協力し合うことができ、高岡の解決すべき課題を克服する鍵となると信じているからです。その取り組みは、これまで高岡には無かった、行政、政治、複数の団体、企業、学校など、全体として共有する共通のビジョンを策定することを意味しています。個人だけでは達成できないことを達成するために組織があり、同様に、一つの団体では成し得ないことを達成するためにも、まちが一体となって取り組む機会をつくって参ります。
また、翌年は創立55周年を控えており、ビジョン実行の出発点として絶好の機会になると言えます。54年間の歴史に対する感謝と共に基本理念や中期ビジョンの再検討、2020年以降実行してきた事業や運動が高岡に与えてきた影響を検証致します。その上で、次なる60周年を見据え、まちのビジョンと共に5年間のフェーズ構築を進めて参ります。
【同志拡大と共育(アカデミー拡大)】
近年のJCI高岡の会員分布図は、人口動態と同じく少子高齢化の縮図となっています。実際に、事業所数の減少と経営者の高齢化も認められ、会員拡大の期待感が薄らぐ風潮があります。しかし、近年、高岡市としても創業支援に力を入れ、若者が活躍できる土壌が整いつつあります。そんな中、JCが高岡に出来ることは、そのような若者をJCに受入れ、社会人としての基礎を磨く機会を与え、そして、近い将来、まち共通のビジョンを実現する同志として共育していくことです。
まちのビジョンはあくまで通過点に過ぎません。ビジョンは実行されることにより初めてその存在価値が認められ、決して絵空事ではなく、実現すべき成し遂げたい未来の姿と言えます。その実行の精度を高めていくためには、事業や運動、活動に共感し、共にビジョンの実現を果たしていく仲間が重要です。そして、その未来の高岡を実現していく仲間に対し、JCの基礎、過ごし方、本業への活かし方を学ぶ機会は、高岡とLOMの発展、更にはその仲間の事業の発展に繋がる土台を構築していくと確信しています。
【地域課題解決の人財育成(ひとづくり)】
2026年までに660件の創業と開業の達成を目指す高岡ですが、ベンチャー企業の生存率を示すデータでは、創業から5年後は15.0%、10年後は6.3%と生存率に課題が残ります。スタートアップ支援において大切なことは、創業と開業が目的ではなく、その企業の継続と発展が最も重要です。
大都市圏のようなITベンチャー系企業のカリスマ経営者の発掘ではなく、まちの課題をビジネスへと変える思考を持つ人財を発掘し、かつて、商人のまちとして栄えた高岡のようにパートナーシップを強化させ、産・商・学・官・金の互いの強みを融合させた地域ビジネスへと転換させていくことのできる経営者育成の機会を創出します。更に、経営者育成を実施していくためにはメンバー個人としての在り方や生き方と向き合うことが重要です。なぜなら組織の行動力と影響力はメンバー一人ひとりの行動の質と量に掛かっているからです。その為にもメンバーが周囲の人々へより良い影響力を発揮するサーバントリーダーシップ開発の機会を創出します。
【経済で勝負できる高岡の創造(まちづくり)】
国内の高付加価値インバウンド旅行者は外国人旅行者全体の約1%に過ぎませんが、訪日旅行者消費額の約12%を占めるなど誘致におる経済効果が期待できます。しかし、高付加価値旅行者獲得シェアは他国と比較し低い状況にあり、尚且つ地方への訪問率は全体の10%未満に過ぎません。そんな中、近年、新型コロナウィルスの鎮静化と高付加価値インバウンド旅行者の誘客に向けて集中的な支援等を行う「モデル観光地11地域」に北陸圏が選出されており、高岡へのインバウンド観光誘致に対する追い風が吹いています。
高岡には、当然のことながら伝統産業や歴史、文化、自然、仕事、人という魅力はもとより、加賀藩の台所として隆盛を極めた食としてのポテンシャルも秘めており、高付加価値旅行者の求める知的好奇心や探究心を駆り立て、旅行による様々な体験を通して地域の伝統・文化、自然、食などに触れ、旅行者の知識を深め、インスピレーションを得られる絶好の地域と言えます。呪文のように語られる、高岡は何もないところ。ですが、世界から見れば日本はアメイジングな国として認知されており、これは高岡も例外ではないはずです。
高岡への誘客を重点的に促進するためにも、観光地の魅力を表す「ウリ」、上質な宿泊施設を指す「ヤド」、富裕層のニーズを満たす人材の「ヒト」、富裕層を誘客する人脈などの「コネ」、ストレスの少ない移動を意味する「アシ」という高岡の魅力的なコンテンツに紐づけを行い、付加価値(①限定感・特別感②魅力のコラボ③商品価値を正しく伝える)を高めるストーリーを描き、高岡オリジナルのツーリズムを構築します。
その発信の機会として、各種国内大会の活用、大邱寿城青年会議所との交流、アスパックや世界大会など、他国に触れる機会を強化し、我々自身が国際的な目線に立ち、高岡の魅力を経済活動として世界に勝負できる機会を創出します。
【信用と信頼(財務規則)】
近年、JCI高岡において経験年数若年化の傾向もあり、財務面および規則面について、知識の共有と財務規則の厳守が課題になってきている傾向にあります。財務とは、高岡に対して効果の高い事業を行う為に欠かせないものであり、組織を維持・継続させていくために欠かせない仕事です。そしてJCI高岡の更なる信用力と信頼力を高めるには、組織の財務と法務にあると言えます。高岡により良い変化をもたらす為には、効果の高い事業を構築する必要があり、その構築には財務や法務に関わる知識を全メンバーが共有し、活用できる状態になっていなければなりません。時代に即し、財務規則の指針を再整備し、知識の共有として誰もがいつでもどこでも検索が可能な状態を創り上げ、一人ひとりの財務規則力を強化することで、組織の信用力と信頼力を高めて参ります。
また、全委員会のパートナーとしての役割を持つ財務規則委員会として、JCI高岡の活動内容を情報発信します。情報発信で大切なことは情報の鮮度を守ることにあります。コンプライアンスをつかさどり、事業の費用対効果を重要視する財務規則委員会が担当することで、円滑な発信と本質的な事業の発信処の見極めが期待できます。
【組織力(総務)】
どのような理念、ビジョンを掲げても組織の土台となる力が弱ければ、何の意味もないでしょう。それが規律の不調和だと考えています。なぜなら、あらゆる会議の出席率の低迷と参画姿勢の欠落、上程期限超過、不均一なセレモニー唱和など、本来規律を正し実行すべきものが実行なされないことによって、組織の一体感が損なわれてしまっていると言えるからです。組織の力を象徴する総務委員会として、全体調和を図り組織の一体感を高めていくためにも横の連携を強化した定期的な例会を開催し、互いの情報共有を行うと共に、市民とメンバーの学びの機会を創出します。また、あらゆるメンバーがJCI高岡のルールを積極的に活用し事業や例会、会議への参画が可能な状態を整え、一人ひとりの基準の高さを上げていきます。そのことにより、多くのメンバーに対してリーダーシップ開発と成長の機会をもたらすことが可能であると確信しています。
【結びに】
1年後、「まち共通のビジョンを土台とした活気ある文化・イノベーションの拠点」として高岡の魅力に付加価値が付けられ、分野を問わず人の集まるまちの土台が構築され、まち共通のビジョンは理解のレベルで浸透し、高岡の目指す理想の姿への共感の和が広がっています。そして、JCI高岡は、1年間の活動を通して洗練されたチームとなり、あらゆる組織を先導する団体として、高岡に存在感を示してまいります。
まちのビジョンは、あらゆる人や組織の希望であって欲しいと願っています。その希望を掲げることが、高岡により良い変革を促す機会であり、正に、希望をもたらす変革の起点としてのJAYCEEの仕事であると考えています。JCはまちに無くてはならない存在であるべきです。誰よりもまちの事を考え、誰よりも行動し、結果を出す存在。1年間という限られた期間の中で役割を高速回転し、また次の1年を迎える。役職の話ではなく役割として、バトンを受け継がれ育ったメンバー一人ひとりが卒業し、その一人ひとりの会社が1つのLOMとしてまちで機能することが、まちや国家のために本質的に貢献することになると考えています。
「ウチの若いのもJC入れてくれ!」そんな組織をメンバーと共につくって参ります。
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